惜しい逸材

先日、時間があったので、珍しくuTubeで、動画を閲覧していた時のことです。

最近英国で、すっかりその動向が聞かなくなった、イタリア生まれの元世界チャンピオン、ミルコの、最新競技風景とデモ風景を、偶然観かけることが出来ました。

私は彼のアマチュア時代の踏風が好きで、ロンドンの選手権で観戦する時も、アマチュアでは彼しか目が行きませんでした。

彼の踏風はイタリア風とロンドン風が程よくミックスされたもので、その師匠筋の確かさが、それは伺えたものでした。

そんな彼がプロに転向しマーカスに師事して、プロチャンピオンにまで上り詰め、ミルコ時代の到来かと思っていたところに、思わぬ伏兵が現れました。

現チャンピオンのアルナスです。

彼に抜かれるまでのミルコの踊りは、迷いが一切ない、踊りが大好きな青年の踊りでした。

しかしアルナスに抜かれて、一位の座を明け渡してからのミルコの踊りは、私見ですが、荒れて見えました。

これは雑誌の情報ですが、何でも彼は、『自分が負けているのは、自分に政治力が無いからだ』『踊りでは絶対負けていない」と言っていたそうですが、果たしてそうでしょうか。

同じマーカスの弟子である彼らは、そのテクニックの上下は、本人が一番分かっているでしょうから、あえて言及しませんが、今のミルコを見る限り、「神に見放されたな」という感は、否めません。

競技というものは、人間が審査します。

だから人間が気に入ってくれる踊りが一番であると考えるのは最もなことです。

だからミルコは人間に訴求する踊りを、追求してしまったような気がします。

彼の現在の踊りからは、昔の「神性」が、すっかり消え失せてしまっていました。

彼の踊りは「王様に気に入られる」タイプの踊りに、すっかり変貌してしまっていました。

昔の「神の御前での踊り」は、すっかり無くなってしまっていたのです。

現在のダンス界で、「神の御前の踊り」を志向しているのは、現チャンピオンのアルナスだけです。

二位以下は全員、「土塊と塵を如何に清めるか」に終始しています。

当然人間ならば、こちらの追求も必要なことです。

しかし「魂の清浄」を忘れて、「土塊と塵」を、いくら清めてみたところで、清々しさは伝わって来ません。

私はミルコなら、この矛盾した二つに切り込んでくれるのではと期待したのですが、今はとても残念でなりません。

現チャンピオンが引退したら、世界のダンス界は、魑魅魍魎が闊歩してしまうのでしょうね。


仕方ありません。

私は弟子と、「今踊」を追求して行くとします、、、。